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2007年11月20日 (火)

07.06.14 帰国 横浜入港

Img_2444 白状すると、実は昨夜、シャンパンからひれ酒、ワインにビールとチャンポンで飲み過ぎたため、横になったらすっかり寝入ってしまった。2個の段ボールに書籍類を分配し、衣料を仕分けただけで、少し休むつもりが、不覚にも寝てしまったのだ。2時半に目が覚めたとき、部屋の風景は一変していた。あれほど散乱していた段ボール箱がきれいに片付いている。段ボールには既にガムテープできっちり封がされ、しかも何箱もが、戸口に積まれてあった。スーツケースも縦になっていた。パッキングし終わっているということだ。酒に飲まれて役に立たなかった亭主が、真夜中に半身を立てている。無様である。寝息を立てているカミサンに、「すまん…お疲れさん」と小声で感謝した。役立たずの僕は、もう一度眠らせてもらう。

 

今朝は、6時には二人とも起きて顔を洗っていた。すぐにでも使えるように携帯電話の充電も互いに終わった。パソコンは叩けない。もうバッグに入れている。しばらくは、テレビの画面を見つめていた。妙に感傷的にさせる。世界の海で撮られたイルカの姿の上に何回も現れてくる文字がそうさせる。「また海の上でお会いしましょう」という文字。それと交合に房総半島の沿岸図が現れ、そこに向かって本船を表す白い点が徐々に向かっている。オルゴールでサザンのメロディが刻まれている。再び、文字が現れる。なにも切々と語ってくれているわけではない。目で感情を揺さぶってくる。

11時、東京湾入口。12時、浦賀水道。13時、横浜港沖合い。14時横浜大桟橋着岸。気温22℃』

刻々と、横浜港が近づいてくるのだ。これが短い間隔で何度も入れ替わる。嫌が応にも過ぎた日々を思い出させ、別れの時間が迫っているぞと、教えている。走馬燈のように頭に浮かぶ。

 

Img_2308 朝食に向かう。船客同士がすれ違いざまに頭を下げ合っているが、言葉が少ない。誰も目が赤い。
いつもと同じように、オートミールとヤクルト、トマトジュースとエッグポーチで終わる。工藤さんが「教授!」と呼びかける。03年世界一周クルーズの時、大学を辞めて乗ったのだが、助教授だったと説明しても、彼女に「教授!教授!」と大声で呼ばれる。「今は、講師しかしとらんよ」訂正しても、「そんなん、ええやんか。どっちゃでも同じ大学の先生や。あだ名にしょ!あだ名よ、教授!ははは」とうとう、仲間からもそう呼ばれて4年が経ってしまった。その彼女が背後から肩を突ついた。「今日もやるんよ。待っとるからね」そう言って足早に消えた。
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『北緯33°52′、東経147°56′。野島先の沖760kに来ております。速力173ノット、時速32k、天候は曇り、北の風13m、気温205℃、水温23℃、波の高さ約15m。気温22℃。正面に見えている島は伊豆諸島の利島です。右前の大きな島が伊豆大島です。これより伊豆大島に沿って北上し、東京湾に入ってまいります。浦賀水道に入るのは12:00頃、13:00頃横浜港港外、14:00頃横浜港大桟橋着岸予定でございます。
天気予報では西方から低気圧並びに雨が押し寄せてきています。もう既に雨を感じる程になっております。昨日13日には平年より一週間遅れにて九州北部・四国地方が入梅しました。
P1030363P1030366にっぽん丸は14:00頃横浜港に着岸いたしますが、右舷付けといたします。着岸しても、荷物の搬出並びに通関準備のためすぐには下船できません。 3時間の停泊にて17:00出港でございます。神戸は明日15:00着岸予定です。
本日の横浜の天気は、残念ながら午前中から弱い雨、夜中には雨が強くなります。気温は22
です。尚、西から低気圧が近付いています。1002hpaと、大きく発達はしておりません。横浜を出港し神戸へ向かう今夜は、南寄りの波高2.5mの予報でございます。神戸の天気予報は弱い雨です。
横浜下船のお客様、にっぽん丸にご乗船いただき誠に有難うございます。 乗組員・スタッフ一同、改めて御礼を申し上げます。  横浜港着岸まで今暫くお寛ぎください』

P1030338 P10300486_11船内に八点鍾と共に、船長の声が響く。これを聴くといよいよ慌ただしい。クリスマスの鐘が鳴り亘って、ギフトを買い回らねばならないと追い立てられるようだ。浮き足立ってしまう。

 

一旦部屋に戻ってから、4階のプロムナードデッキを、一歩一歩足で踏みしめて歩いていった。居る、居る。鉄板のコンディションを確かめている。雨模様だと解りながら、黙々と玉を打っている。言葉を交わすと、これまでの想いが一気に噴き出しそうで、みんな寡黙だ。デッキの床面も泣いている。人影が映り混むほど濡れている。ショットが難しい。

P1030359白組:菅谷、萩原、草浦、高木保彦、高木敏恵。赤組:松田史郎、松田サエ子、高嵜、工藤、塩野。

名残惜しい気分で、玉を打つ。いつまた、この船上で会えるか定かでは ない。1ヶ月の集大成の打撃を見せる。ナイスショットが出た時に、思わず喜びの声が上がる。重苦しい空気を敏恵さんやサエ子さんが和らげてくれる。3番から4番ホールの戦いに入ると、徐々にいつもの冗談が飛び出す。オートボケ・デビル高嵜だ。「来年、世界一周せえへんの、教授?」「行けないよお!無理、無理!!」「うちら、おとうちゃんと行で、申し込んだわ」「高木さんとこも申し込んだ言うとったよ」「松田さん!あんたらも、行くでしょお?」もう来年の話をしている。そう言えば、Hさんは、2010年まで、もう申し込んだとご本人が言っていた。船は、乗ってみれば解るが、こりゃあ、説明の付かない麻薬だ。

 P1030352 P1030347 P10303415番ホールの攻防戦 になると、誰もがいつもの気色立った顔に戻っていた。声も叫びに変わっている。船は、伊豆大島の横をゆっくりと抜けていく。普段眺める大島の裏側である。ゴルフコースが見えてきた。その先には、熱海や富士が見えるはずだ。

P1030346 P103036 結局、白の我々が勝った。バッド・コンディションだったが、ラストを白星で飾った。ゴルフの最終ホールでティショットが思い通りに飛んだ時の気分である。次に繋げたような気がする。

06年の世界一周クルーズでは、接岸していても、まだデッキゴルフをしていたことを思い出す。年老いた男女が、長い棒の箒でデッキの掃除でもしているのか。横浜大桟橋で出迎えの人たちの目には、そう映ったに違いなかった。デッキゴルフのメンバーの多くは、神戸まで乗っていく。高嵜さん、松田さん夫妻、塩野さん、工藤さん、高木さん夫妻。7人もいれば、神戸までゲームはまだまだ続く。

 

P1030379 P103038 昼食をした。浦賀水道に入った。船は、横浜のベイ・ブリッジをくぐった。遥か先に、ランドマーク・タワーが霞んで見える。下船は、5階の船客から始まって、順次1階となる。まだ充分に時間はある。写真を焼き付けたCDを渡しながら、最後の挨拶をし合う。泣いている人たちが多くいP1030384 P1030378 る。もう会えないかもしれないと言っている。確かに、乗船客の3割以上は、僕も含め、なんらかの病気にかかっている人たちだ。杖を突いていた人が、帰国時には杖を手にしないでも歩けるようになっていることは、よく目にした。毎朝、スポーツデッキで潮風を受けながら、ラジオ体操に通った人、フィットネス教室に通った人、規則正しい生活を続けている内に、健康を取り戻した人もいる。元来の内臓疾患などの人は、再びストレスの溜まる世事の生活に戻ることで、もう乗れない人もいる。そうした想いが去来するから、抱き合って別れを惜しんでいるのだ。全国から集まった人たち、一期一会となるか、新しい交友となるか、それは、暑中見舞いが舞い込む頃に見えてくる。

P1030434 P1030424 旗が配られた。プロムナードデッキが騒がしくなってきた。携帯電話で、桟橋と交信している人。望遠レンズで顔を探している人。1ヶ月前の光景が舞い戻ってきた。寄港地で先に帰国した講師やアーティストの方々が出迎えている。雨が降っているので、出航の時ほどの人はいない。

神戸に帰る人も、一旦はイミグレを通る。なぜなら、日本に帰国したのだから。荷物は、スタッフが次々と税関まで運び出してくれている。

P1030439 P1030440 下船する。手を振る。イミグレの前で、ジュン君と握手で別れる。

 

スタッフの浅間君が荷物を運んでくれる。ここで最後のハプニングが起きた。P1030441「麻薬なんか入ってないでしょうね?」税関員が身を乗り出して、にこやかに冗談を言ってくれる。「ありませんねえ」笑って答えた。ところが、相手の顔から笑い顔は消えている。麻薬犬が怪しい手荷物を探知したというではないか。スーツケースから、段ボールまで開けられ、何度も手を入れて探られた。カミサンと二人、見合わせて驚く。係官は、探知した犬の行動を信じたいですからと、笑いながら、手を入れている。我々は為す術もなく、その場で立ち尽くすのみ。何が匂ったのか、見当も付かない。しきりに首を傾げながら、衣服や土産物を手にとって探していた。身に覚えがない我々二人は、笑いながら質問に答えていた。かなりの時間が経ったころ、カミサンが「主人が腎不全ですので、特殊な食べ物を持って出ました。ビスケットのようなものです。これです」と差し出して見せた。小腹が空いたときに食べられるように持ち込んだ残りだった。妙なものがひっかったものだ。麻薬犬の訓練には、無塩食など初体験だったのか。ともあれ、何も出てこないままに終わった。当然のことだが、気がつけば下船した船客の姿は、とうの昔に消えていた。周りには、どうなるかと見守ってくれていたクルースタッフだった。途端に汗がでてきた。まあ、最後の最後までメモリアルな出来事を創ってくれるものだ。

 

宅配便のカウンターで段ボール類を預け、タクシーには、重要なものと、すぐ必要なものを入れたスーツケースを2個トランクに入れた。車窓をひさしぶりの日本の風景が流れている。ビル群をあらためて眺めていると、急激に成長しすぎた国に思えた。日本をどこかに脱ぎ捨てて、無理してアメリカナイズした国で、それでいてなりきれていない。追従したままで、独立していない風景だった。「バナナ族」。外資系企業を渡り歩く日本人を俗にこう呼んでいる。内面は白人だが、やっぱり外側は黄色人だという揶揄。日本の街も「バナナ」だなと、首都高を上野で下りた。明日から、1ヶ月分の新聞の切り取り作業が始まる。そして、二人で5000枚以上の写真を整理削除することも始まる。そして何よりもまずは、孫の顔を三井記念病院に見に行くのだ。今晩は、エンジンの震動無しでも眠れるだろうか。心配だ。

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